横浜地方裁判所 昭和42年(ワ)1417号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告池本は、約二〇年以前から消火器火災報知機等の販売を業としていたが、取引上の信用と税金対策のため、昭和三一年に原告会社を設立した。原告会社の役員は知人の名義を借りて形式を整えたにすぎず、出資した人も共同して営業する人も一人もいない。原告会社は、全く原告池本一人の個人企業にすぎないことが認められる。
原告会社は原告池本の個人企業であるから、原告会社の損害というも原告池本の損害であることに変りがない。本件において原告池本は、得べかりし利益についてのみ原告会社の損害として請求しているから、原告池本に得べかりし利益の請求権が認められ、これを自己の損害として請求しない以上、原告会社の損害として認めても、何等差支がないものというべきである。
被告は、過失相殺の理由として、原告池本が歩行禁止の交差点内を漫然と通行し、しかも、六八才の高令であつたため防禦態勢をとることができなかつた旨主張する。
しかしながら、本件交差点内の原告池本が横断していた箇所が、歩行禁止となつていること、および、原告池本が高令のため防禦態勢がとれなかつたことについては、何等立証がない。
又、交差点において、横断歩道の設けられていない場所を歩行者が横断しているときは、車両はその歩行者の通行を妨げてはならない(道路交通法第二八条の一)のであるから、原告池本は被告車に優先するものである。
そうすると、原告池本は、被告車が右折しないことを信頼して通行しているものであるから、被告車が警笛を鳴らしたにもかかわらずこれに気がつかなかつたような特段の不注意を立証しない限り、原告池本に過失があつたものと認めることはできない。よつて、被告の過失相殺の主張は理由がないので採用の限りでない。(石藤太郎)